REPORT

案内には「東京テレポート」駅から3分と書いてあるけど、Zepp DiverCityに着くまでけっこう歩いた。で、急いで中に入ると、立錐(りっすい)の余地が無いくらいの超満員。オーヴァチュアの『MOFU』から、バンドが勢いよく『暁の三匹』のイントロを響かせる。でも主役はまだ不在。すると下手から、今、まさに辿り着いたとばかり、戯けた駆け足の仕草で中央へと進むChage。いや、チャーリーと呼んだ方がいいのかな? でも、早くも場内は、完全に彼のペースである。

MULTI MAXの代表曲から、2012年の“チャゲトルズ”の時に渋谷AXで聴いた曲、さらに新曲…。Chageを含め7人による豊かな音圧を浴びてると、体の隅々まで気持ちいい。ライヴの冒頭からコレだから、さらにさらに…。アコースティック・セットの彼もいいけど、バンドで観てこそ、アーティストとしての“全貌”が理解できる。でも、一言でバンドといっても、ここの人達の中身は多彩だ。例えば最初のコーナーの3曲、『WORKING』『DEEP』『MULTI MAXのテーマ』を取ってみても、リバプール・サウンド、70年代風ハード・ロック、そしてフィフティーズのロカビリーの要素と、これだけ幅広いわけだ。

Chageとファンの絆は強い。最初のMCで、彼は「貴方たちはテトラポットのようによく堪えた」「俺は誇りに思う。ありがとう。本当にありがとう!」と言った。この言葉でもう、何の説明も要らない。でもテトラポットを持ち出してきたのは、もちろんユーモアからだろう。こういう時だからこそ、それが心と心を繋ぐ潤滑油となることを、彼は知ってて敢てそんなふうに言ったのだ。客席でこの言葉に触れて、なんか救われた想いだった。滋味深い『春の雪』。MULTI MAXのデビュー曲にして永遠の名曲『SOME DAY』。聴きたかった曲が惜しげもなく演奏されていく。

今回のバンドは「1/6」という名前である。“ワン・スラッシュ・シックス”と読む。Chageの誕生日が1月6日だから、というのも理由のひとつらしいが、西川進(G)、村上啓介(G&Vo)、久松史奈(Vo)、佐藤強一(Dr)、力石理江(Key)、小島剛広(B)という6人。佐藤と小島の強力なリズム隊。歌心もたたえるフレーズの村上と、まさにロックの衝動を体現する西川という、豪華二本だてギター陣。新鮮な色彩を音に加え、時にノリノリで鍵盤を叩く力石。そしてChageとの丁々発止で奥深い歌世界を築いていく久松の歌唱…。まさにどれかひとつ欠けても成立しない。

ハイライトは『組曲WANDERING』あたりからだった。さらに『官能のEsplendida!』と、会場全体が揺れ、そしてうねった。四の五の言わず、音楽こそで意思を表すのだという、執念にも近い全員の気迫と集中力。それが熱演を生んでいく。いつしかモニターの上に立ち、一段高いところからステージと客席を統括するかのようにパフォーマンスするChageの姿は気高かった。演奏しているのは全体としてブリティッシュに根ざしたロックに他ならないのだが、どこかで日本の祭りとも通奏低音でつながっている雰囲気にもなっていく。そして本編最後に演奏されたのが『equal』という新曲だ。

こんな状況となり、彼は創作活動をしようにも、どうしても「曲を作る気になれなかった」時期が続いたと告白した。そんな時、盟友である作詞家の松井五郎がやってきて、「これはChageとファンの人達のために書いたんだ」と言い、一編の詞を置いていったのだ。その言葉とともに歌詞を読んだ彼は、すぐさまこう誓った。「とびきりの楽曲を作ってやろうじゃないか!」。それがこのあと演奏された『equal』だった。昂ぶるでも落ち込むでもなく、淡々と、でも力強く歌われていく。“道の終りは まだここじゃない”という歌詞が胸に響く。会場のファンの人達もそうだったろうが、目頭が熱くなった。アンコールを待つ間も、その熱は引くことがなかった。

エンディングは『WINDY ROAD』。紙飛行機が、たくさんのカーヴを描き飛び交うなかでライヴは終わっていく。どの曲の前だったかは忘れたが、Chageは「負けねーぞー」と叫んでた。「色々な想いがあって、色々なことがあって…。でも前に進まにゃいかんのじゃ」とも言っていた。いや、もう既に、確かに進んでいる! 僕はそう思うのだ。会場のみなさんも、きっと同じ想いだったのではなかろうか。終演後、楽屋でChageに会い、一言二言言葉を交わし、固く握手をして外へ出た。

音楽評論家 小貫信昭

『ChageLiveTour2014 ~ equal ~』

M01 暁の三匹
M02 WORKING
M03 DEEP
M04 MULTI MAXのテーマ
M05 Mr.Liverpool
M06 勇気の言葉
M07 Style
M08 春の雪
M09 SOME DAY
M10 My Treasure
M11 TOKYO MOON
M12 LADY BLUE
M13 組曲WANDERING
M14 官能のEsplendida!
M15 愛がお前をすくい投げ
M16 All You Need Is Live
M17 &C
M18 永遠の謎
M19 equal
<encore>
M20 アイシテル
M21 WINDY ROAD